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ファンダメンタル分析とマクロ経済政策




マクロ経済政策(金融政策と財政政策)がどのように為替レートに影響を与えているかについて一般的な解釈を説明します。

マクロ経済政策とは、総需要の調整により経済全体でのモノ・サービスの供給と需要のギャップを縮小させ、物価と雇用の適切な水準を達成し維持しようとする政策です。マクロ経済政策には、金融政策と財政政策があります。金融政策は通貨を発行する中央銀行が行う政策であり、公定歩合などの政策金利を上下させたり通貨量を増減させたりします。また、財政政策は政府が予算である財政を使って行う政策で、政策手段としては政府支出を増減させたり、税を増税、減税したりします。

1.金融政策と為替レートの関係

金融政策の目標としては、物価の安定、経済成長の維持、雇用水準の維持、貿易黒字赤字の是正、為替レートの安定などが挙げられますが、その中でも物価安定が最優先される目標と言えます。購買力平価説によると物価の上昇は国内での通貨価値の下落を意味しますから通貨を発行している中央銀行としては、インフレによる通貨価値の目減りを防ぐことは重要な政策目標といえます。中央銀行は金利と通貨量の2つをコントロールし金融政策の目標を達成しようとします。日銀を例にとれば、公定歩合の変更、コール市場など短期金利の誘導を行い、金融市場で 決まる金利に影響を与えようとします。

政策金利の引き下げや通貨供給量を増やすといった金融緩和策が行われれば、金融市場での金利が下落しますから、お金を借りるコストが低くなり、以前よりお金を借りて、設備投資や消費を増やそうと総需要の増加が期待できます。←不況(失業)対策 一方政策金利の引き上げや通貨供給量を減らすといった金融引締策が行われれば、金利が上昇しますから、お金の借り入れコストが高くなり、設備投資や消費が抑えられ、モノ、サービスの総需要は減少します。

次に金融政策がどのように為替需給に影響を与えるか考えてみます。例えば日本が公定歩合を引き上げる政策や短期金利を高めに誘導する政策を行うと、短期金利、長期金利は上昇します。金利上昇は日本での資産運用がその分有利になりますから、海外から日本へ資本流入が増加します。その際、海外投資家は日本の債券などを購入するために外貨を円に換える必要がありますから円買い需要が増え、日本の金融引締政策は円高要因となります。一方日本が公定歩合を引き下げる政策や短期金利を低めに誘導する政策を行うと短期金利、長期金利ともに下落します。金利の下落は日本での資産運用がその分不利になりますから、日本から海外へ資本流出が増加します。海外投資家は日本の債券などを売却するため円売りが増え、日本の金融緩和政策は円安要因となります。

このように、金融政策は直接的には資本取引の為替需給に影響を与えると言えます。ただ、例えば金融緩和を行えば、設備投資や消費増加から景気拡大を促すため、間接的に金融政策は貿易の為替需給にも影響を与えると言えます。その場合は景気と輸出入の増減の関係を検討する必要があります。

2.財政政策と為替レートの関係

財政政策の目標としては、道路、鉄道、空港などの社会資本の整備と個人間の所得格差を是正すること、景気変動の安定化が挙げられます。財政収支過程を通じて総需要の調整を行うことで景気変動を安定化させます。政府支出の増加、減税などを行う財政拡大政策は、モノ、サービスの需要を増やし景気を拡大させることができます。では財政拡大政策はどのように為替需給に影響を与えるのでしょうか。例えば日本の景気拡大は日本の輸入を増やし輸出を減らす傾向(貿易黒字縮小)がありますから、日本の財政拡大政策は貿易実需の面から円安要因です。

また、日本で財政拡大政策を行うと財政赤字は拡大し、国債の発行が増加します。国債の増発は国債価格を下落させ通常長期金利は上昇します。日本の長期金利が上昇すると、日本へ資本流入が増加しますから円高要因となります。しかし、多量の国債増発は、国の返済能力に対し不安が生じます。その場合は将来の国債価格下落によるキャピタルロス懸念から日本国債の売却が増加する可能性(日本からの資本の流出)もあり、財政赤字拡大は円安要因といえます。数年前、外国格付け会社による日本国債の格下げニュースが円売り材料となっていたこともこの意味で理解できるでしょう。最近米国の「双子の赤字問題」がクローズアップされていますが、外国為替市場では米国の財政赤字拡大はドル安要因と受け止められています。

また逆に、緊縮財政は景気過熱を抑える効果がありますから、モノ不足が解消され、総需要減をもたらします。その意味で上記とは逆に日本の貿易実需の面からは円高要因と言えます。財政の健全化を目指す政策では、国債の発行は抑制されますから、将来の国債価格下落によるキャピタルロス懸念がなくなり、円高要因といえます。


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