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ボラティリティを利用した実践的な外国為替取引の手法




 ここではボラティリティを利用した実践的な外国為替取引手法についてです。

 まずその前にボラティリティについての一般的な説明とオプションアービトラージの手法についての解説を行ないたいと思います。オプション価格(プレミアム)を決定するには、原資産の価格、行使価格、行使期限までの期間、金利、原資産価格のボラティリティ(価格変動率)といった変数を入れる必要がありますが、その中でもボラティリティは重要な変数です。ボラティリティについては、一般的に、次のようなことが言われています。

 

 1.短期では、ボラティリティの変動は大きくなる場合がある。
 2.長期では、ボラティリティは安定的である。
 3.一時的に平均的なボラティリティから乖離しても平均値に回帰する傾向がある


長期のボラティリティの推定は、短期のボラティリティの推定よりはるかに信頼度は高いといえ、これをグラフ化したのをボラティリティコーン(円すい)と呼ばれています。

ボラティリティコーン

 また、ボラティリティの推定の手法には、過去の原資産価格から求めるヒストリカルボラティリティと市場参加者が考えているボラティリティであるインプライドボラティリティがあります。市場におけるボラティリティの評価はオプション市場のプレミアムに反映されていますからブラックショールズ式においてボラティリティだけを未知数にして解けばインプライドボラティリティが求められます。

 このボラティリティの動向をうまく利用することにより、収益をあげる手法がオプションアービトラージと呼ばれています。これは取引可能な各種条件のオプションの相対的なインプライドボラティリティの格差を利用する方法です。各種条件のオプション市場の中には、理論値と比べミスプライスされているオプションがよく存在します。例えばドル円でドルが急騰した場合、急激にドルコール需要が高くなるとオプション市場の流動性から、ドルコールがドルプットに比べインプライドボラティリティが著しく高めとなることが稀に起こります。このようなミスプライスは多くの場合、一時的な要因によるものであり、いずれ理論値に収束します。従って、理論値に比べ割高にミスプライスされているオプションは売るべきであり、割安にミスプライスされているオプションは買うべきです。このような裁定取引をオプションアービトラージと呼んでいます。以下の方法で行います。

 a:割高、割安オプションを発見し、割高を売り、割安を買う。
 b:デルタ、ガンマ、ベガ、セータ・ニュートラルポジションにする。アービトラージの基本は価格のゆがみをとらえ収益を確保することです。この点から他のオプションを加え、原資産の価格変動に左右されないポジションつまり、感応度係数を全てニュートラルにするポジション構成する必要があります。
 c:価格のゆがみが正常に戻った時点で全てのポジションを解消し、収益を実現します。売ったオプションは買い戻し、買ったオプションは売り戻します。


これらを踏まえ、ボラティリティの特性を利用した実践的な外国為替取引の手法をご紹介します。

 個人的には勧められませんが、スワップ金利の受取を狙いポンド円の買いなど高金利通貨買いを行なっている投資家の方もいらっしゃると思います。その取引手法を用いるときは、相場変動が大きいとき、つまりボラティリティが大きいときよりボラティリティが小さいときの方が確率的には有利といえます。なぜなら、相場変動が大きいときは、仮に逆に相場は動いたときは、スワップによる金利の受取より相場変動によるロスが大きくなる確率が高くなるからです。逆にボラティリティが小さいとき、もみ合い相場のときには、仮に逆に相場が動いたとしても、相場変動によるロスよりもみあい期間が長ければスワップによる金利の受取が多くなる確率が高くなるからです。

では、どうようにして、ボラティリティ水準を判断すればよいのでしょうか。上記特性1.2より、まず長期オプションでのインプライドボラティリティを検証します。過去10年ぐらいのデータを用い、その通貨ペアでの平均的なインプライドボラティリティ水準を知ることが第一です。平均的なインプライドボラティリティ水準より低いことを確認して、取引を開始するのがよいでしょう。

また、過去平均的なインプライドボラティリティ水準に比べ直近のインプライドボラティリティが高く乖離している場合は、ボラティリティは上記特性3より、いずれ平均値へ回帰する傾向があるので、平均値へ回帰する動きを見極めながら取引を開始します。この場合、過去のボラティリティをプロットしたチャート分析も行なうのも有効かもしれません。



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